2012年02月10日(金)

あの夏。

僕は、結核病棟に入院していた。

結核病棟とは、感染の危険性のある結核患者を隔離する為の病棟である。

病棟とは言っても、独立した建物ではない。同じ病院の建物の最上階が、立ち入りを制限されているだけである。結核病棟と呼ばれるのは、「天国に近い病棟」と周りから呼ばれた、そんな昔からの名残だ。

実際、いい薬が出来るまでは、結核は確実に死に至る病だった。

しかし、今では結核で死ぬ者は日本では殆ど居ない。

咳が止まらず、血を吐き、苦しむまで悪化する場合も少ない。

そもそも、法定伝染病の中では、感染力はさして強くはないのだ。
 
だから、結核病棟に悲壮感はない。ただ、世の中から隔離されているという事実があるだけだ。
 
春先に引いた風邪をこじらせた僕は、大学受験を控えているにも関わらず、こうして、閉ざされた白い箱の中に取り残されてしまった。
 
入院患者は、僕、ただ一人。
 
病棟の看護婦さんは7人。
 
僕は、かつて「天国に近い病棟」と呼ばれた場所で、忘れられないひと夏を過ごした。
 
 
 
 
 
 
 
……というエロゲーはないですか?