2012年04月12日(木)
で、
間が悪いというか、運が悪いというか……我ながら、生きるのが下手だとしか思えない。
だいたい、人生の一大事・高校受験からしてひどかった。試験前日の大雪で転んで左手を骨折する。その痛みで一睡も寝れない。試験会場に向かう電車は人身事故でストップ……と災難続き。
それでも会場に辿り着いて、なんとか補欠入学できたまでは良かったんだ。
それなのに、入学式当日に39℃の高熱。よりによってインフルエンザだ。
で、1週間も学校に行けなくなってしまった。
わかるかい?
ただでさえ、はじめての高校生活で心細いっていうのに、僕一人だけ1週間、出遅れちゃったんだぜ。
この間の悪さ。
この運のなさ。
僕は、生きるのが下手なんだと、思わざるを得ないよ。
で、
ベッドの上で不安にのたうち回る事、1週間。
やっと、医者の許可も出て、晴れて学校に向かった訳だけど、はじめて通学路を歩く僕のアウェー感ったら、ハンパなかったよ。
それでも、途中で帰る訳にもいかない。なんとか学校に辿り着き、生徒に教室の場所を聞き、はじめて会うクラスメイトに、自分の席の場所を聞いて椅子に腰掛けた時には、もう、心が折れるどころか、複雑骨折を起こしてたよ。
当然、教室は妙に静まり返り、いやな感じの視線が集まっているのを、僕は丸めた背中で感じていた。
そんな時だった。僕の前に誰かが立ったんだ。
救世主だ! そうだよ、かわいそうな僕に手を差し伸べる天使が、このクラスにもいたんだ!
顔を上げた僕の目の前には、確かに、天使がいた。
そう、まさしく天使だった。
僕の目の前には美少女が立っていた。
教室の静けさがざわめきに変わる。僕に集まっていた冷たい感じの注目が、熱さを帯びて、僕を見下ろしている彼女に集まるのがわかる。
みんなと同じ制服のはずなのに、彼女だけまるで誂えたようだった。均整のとれた体のライン。女性らしい優しさを帯びた肩の稜線の上を、黒く長い髪が踊る。キレイな額にかかる切りそろえられた前髪。長いまつ毛、その下の澄んだ瞳に、僕は魅射られていた。すらりと通った鼻筋、潤いを閉じこめた禁断の果実のような唇が、うっすらとひらく。
まるで、鈴の音のように澄んだ声で、彼女は言った。
「お前、1週間後に私に好きだって告白するけど、私、付き合えないから」
それは、僕に向けられた言葉だった。
ああ、そうだ。思い出した。
僕は、彼女を知っている。
彼女は、彼女はそういう奴だった。
僕は、言った。
「で?」
これが、あの、怒濤の1週間の始まりを告げる言葉だったんだ。
……という始まりのラノベをかんがえた。
タイトルは『で?』